環境問題や社会問題への関心が高い企業の多くは、国連グローバル・コンパクトに加盟しています。転職活動を行う人にとっては、応募先企業が国連グローバル・コンパクトに加盟しているかどうかは、企業選びの重要な判断材料となるでしょう。しかしながら、その内容について詳しく知らない人も少なくありません。本記事では、国連グローバル・コンパクトの概要とその意義について詳しく解説します。
目次
国連グローバル・コンパクトとは
国連グローバル・コンパクトとは、持続可能な社会の実現を目指し、企業が遵守すべき原則を提唱した世界的な枠組みです。それでは、グローバル・コンパクトの発足経緯や、日本企業における加盟状況について詳しく見ていきましょう。
国連グローバル・コンパクトが発足した経緯
国連グローバル・コンパクトが発足した背景には、1990年代に顕在化したグローバル化によるさまざまな課題があります。この枠組みは、1999年1月に開催された世界経済フォーラムで、当時のコフィ・アナン国連事務総長が提言したことをきっかけに、翌2000年に発足しました。
この提言では、環境問題や社会問題の解決に向けて、国家や国際機関だけでなく、企業や団体にも積極的な協力を求める内容が示されました。国連グローバル・コンパクトは、企業が守るべき原則として「4分野10原則」を掲げており、加盟企業はこれらの原則を遵守しながら事業活動を行っています。
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)
国連グローバル・コンパクトの本部はニューヨークに置かれ、「UNGC」と略されます。日本国内における組織としては「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」が活動しています。
日本では、製造業やサービス業をはじめ、多様な業界の企業が加盟しており、その範囲は幅広いです。2024年12月時点で、日本国内で加盟している企業や団体の数は640に達しています。加盟団体には民間企業だけでなく、財団法人や学校法人、地方自治体なども含まれています。
参考:加入企業・団体一覧 | 組織概要 | グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
グローバル・コンパクトに加盟する企業が増えている理由
グローバル・コンパクトが発足してから四半世紀近くが経過しましたが、近年は加盟企業が増加しています。その背景や理由について詳しく見ていきましょう。
SDGsへの関心やESG投資の高まり
近年、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まっており、それに伴いESG投資に注力する投資家も増えています。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点を重視し、これらの課題に配慮しながら社会的責任を果たしている企業に対して行われる投資のことです。適切なガバナンスが実施されているかどうかも重要な評価基準となっています。
グローバル・コンパクトに加盟することで、企業は自社の取り組みを消費者や投資家に対して明確に示すことができます。このような取り組みは、投資家からの信頼を得るうえで大きなメリットとなり、結果として資金調達が円滑となり、企業価値の向上にもつながります。
サステナビリティ経営の推進
日本国内では、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)がセミナーやシンポジウムなどを定期的に開催しています。グローバル・コンパクトに加盟している企業や団体は、これらのセミナーやシンポジウムに無料で参加することが可能です。
これらのイベントでは、他社事例の共有や最新動向の紹介などが行われるため、サステナビリティ経営全般に関連する情報を得ることができます。この情報をもとに、自社のサステナビリティ課題を解決したり、それを経営戦略へ反映させたりすることが可能です。その結果、サステナビリティ経営をさらに推進し、企業価値のさらなる向上を実現することができます。
国連グローバル・コンパクトの10原則
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国連グローバル・コンパクトで提唱されている10原則は、人権・労働・環境・腐敗防止の4つの分野に分類されています。それでは、各分野にどのような原則が含まれているのか、その内容を詳しく見ていきましょう。
人権分野
人権分野には次の2つの原則が含まれています。
●原則1「企業は、国際的に宣言されている人権の保護を支持、尊重すべきである」
●原則2「企業は、自らが人権侵害に加担しないよう確保すべきである」
この人権分野は、1948年に採択された世界人権宣言を由来としています。世界人権宣言では、すべての人間が平等であり、不当な処罰を受けないことや個人の自由が保障されるべきことが述べられています。また、勤労の権利や同一価値労働同一賃金、労働組合の結成、有給休暇などについても明記されています。
通常、人権は国家と個人との関係で議論されることが多いですが、企業の協力なしにはその実現が難しいとされています。
国連グローバル・コンパクトの原則1では、世界人権宣言を受けて企業が取り組むべき事項や、現状で抱えている課題について言及しています。一方、原則2は企業が人権侵害に加担することを防ぐために必要な内容を示しています。直接的な加担だけでなく、加担の黙認や、直接的・積極的でなくても人権侵害によって利益を得る受益的加担も含まれます。
労働分野
労働分野には次の4つの原則が含まれています。
●原則3「企業は、結社の自由と団体交渉の実効的な承認を支持すべきである」
●原則4「企業は、あらゆる形態の強制労働の撤廃を支持すべきである」
●原則5「企業は、児童労働の実効的な廃止を支持すべきである」
●原則6「企業は、雇用と職業における差別の撤廃を支持すべきである」
これらの労働分野の原則は、「労働における基本的原則および権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」を由来としています。それぞれの原則は、労働に関する社会的課題やその解決に向けて企業が果たすべき役割を示しています。
原則3は労働者がより良い労働条件を獲得するために必要なことです。企業は、労働組合に加入した労働者や活動をしている労働者に対して、不利益な扱いをしてはならないものとされています。
原則4と原則5は、基本的人権を守るうえで極めて重要な内容です。特に児童労働の禁止については、児童の心身の健全な発育や教育機会の確保にも直結します。日本など先進国では大きな問題とはされていませんが、発展途上国では依然として深刻な課題となっています。
原則6は、企業が社員を募集・採用するにあたって、職務に無関係なことで不利な扱いをしてはならないとするものです。例えば、人種や性別、宗教、出身地、社会的出自、特定の病気の既往歴などが挙げられます。直接的差別はほとんど行われていないものの、間接的差別は先進国でも依然として多く見られる現状があります。
環境分野
環境分野には次の3つの原則が含まれています。
●原則7「企業は、環境上の課題に対する予防原則的アプローチを支持すべきである」
●原則8「企業は、環境に関するより大きな責任を率先して引き受けるべきである」
●原則9「企業は、環境に優しい技術の開発と普及を奨励すべきである」
これらの原則は、「環境と開発に関するリオ宣言」と「国際アクションプラン(アジェンダ21)」を起源としています。環境問題における企業の責任や取り組むべき行動を明確に示した内容です。
原則7では、環境問題が発生する前の段階で予防的な対策を講じることが求められています。これは、問題が顕在化してから対応するよりもコスト効率が高く、結果として長期的な利益につながるためです。
原則8は、企業が自主的に環境保護への責任を果たすことを求めています。この責任には、自社内での取り組みに加え、サプライヤーとの協力や国際的なイニシアチブへの参加なども含まれます。
原則9では、環境に優しい技術の開発と普及が単に環境保護だけでなく、企業全体の競争力向上にも寄与することを示しています。これにより企業の総合力が高まり、持続可能な成長や長期的な利益につながるとされています。
腐敗防止分野
腐敗防止分野は次の1つの原則が含まれます。
●原則10「企業は、強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗の防止に取り組むべきである」
国連グローバル・コンパクトが提唱された当初は、人権、労働、環境の3分野9原則のみでしたが、2004年に新たに腐敗防止分野と原則10が追加されました。
ここでいう「腐敗」とは、権力を個人の利益のために不正に利用することを指します。腐敗が蔓延すると、公正な競争が損なわれるだけでなく、持続可能な開発を阻害する要因となり、法的リスクや風評リスクを引き起こします。その結果、社会全体に悪影響を及ぼし、不利益を被る人々も増えることになります。
企業における腐敗防止策としては、社内でのプログラム導入や社員教育が挙げられます。また、社外対策としては外部機関への状況報告などが行われています。
ボーコンセプトも加盟
北欧デンマーク発のインテリアブランド「ボーコンセプト」は国連グローバル・コンパクトに加盟しており、環境への影響を最小限に抑えることを重要視しています。当社では、顧客に高品質な家具を適正価格で提供する一方で、環境を犠牲にしないという理念を掲げています。
さらに、従業員の権利を尊重した方法で製造を行うことを行動規範に明記しています。この行動規範はボーコンセプト内部だけにとどまらず、サプライヤーにも遵守を義務づけています。その結果、ボーコンセプトおよびそのサプライヤーの従業員は、安全で安心できる労働環境のもとで働くことが保証されています。
まとめ
国連グローバル・コンパクトは、持続可能な開発を実現するために企業が遵守すべき事項を提唱した枠組みです。その内容は、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野にわたる10原則で構成されています。国内では、加盟している企業や団体の数が640に達しており、特にSDGsやサステナビリティ経営への関心が高い企業が中心となっています。国連グローバル・コンパクトに加盟している企業は、働きやすい環境が整備されていることが多いのも特徴です。転職先を選ぶ際には、国連グローバル・コンパクトへの加盟状況を確認してみるとよいでしょう。
採用インフォメーション
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