「顧客体験価値」というワードに聞きなじみが薄いと感じる方は多いでしょう。しかし、近年は注目度が増しており、今後も重要性が確実に高まる用語です。これから社会に出る方や特にお客様を相手にした仕事に就かれる方はしっかり理解を深めておきましょう。
企業が成長していくためには他社との差別化が必須です。とはいえ、現代はよい商品が市場にあふれており、品質のみで差別化することが難しい時代でもあります。
そこで重視されているのが顧客体験価値です。この記事では、顧客体験価値とは具体的にどのような意味か?向上させるポイントは何かを解説します。
目次
顧客体験価値とは?
顧客体験価値とは、商品やサービスの購入を通じて得られる一連の体験に顧客が感じる価値のことです。「Customer(顧客)」と「Experience(体験)」が語源であり、略して「顧客体験」「CX」とも呼ばれます。
概要
顧客体験価値とは、人がある商品を知って興味をもってから実際に購入し、利用し終えるまでのすべての体験に顧客が感じる価値のことです。商品だけでなくWebサイトの印象や店舗の雰囲気、接客スタッフの親切さなど、あらゆる接点での体験を意味します。
例えば、素晴らしい顧客体験価値を提供する企業として有名なのがスターバックスです。スターバックスは美味しいコーヒーだけでなく、スタッフの接客レベルの高さや店舗のインテリア、広くて心地のよい空間の提供など、トータルな価値で多くの顧客から支持されています。
近年は、顧客体験価値が業績と相関関係があるという調査結果も出ているため、世界の企業が注目しています。日本でも毎年「顧客体験価値(CX)ランキング」が発表されており、2023年の1位は帝国ホテル、2位がサイゼリヤです。
目的
企業が顧客体験価値を高める目的は、あらゆる顧客との接点で満足度を高めることで、事業成長につなげるためです。購入前の顧客体験を向上させれば新規顧客獲得につながります。また、購入後も適切な情報提供やアフターサービスなどの快適な顧客体験を提供し続ければ、既存顧客の維持や顧客単価のアップにつながり業績向上が期待できます。
顧客体験価値に注目が集まる背景
顧客体験価値が注目を集めている背景を解説します。
インターネットの発達による顧客接点の増加
今やインターネットには企業のWebサイトだけでなく、レビューサイトやSNSなど消費者が商品情報を入手できる接点が増えています。これは、商品を知ってもらうチャンスが増えただけでなく、顧客が他社商品に魅力を感じて離れてしまうリスクが高まったことも意味します。
さらにSNSによって評判がすぐ拡散し、売上にも影響を与えるようになりました。以前よりも顧客の情報収集力や発信力が高まったため、企業もこれまで以上に顧客体験価値を高める努力をするようになりました。
消費における「体験」の重視
消費者ニーズの変化も影響しています。現代は「モノ消費からコト消費」といわれるように、商品に対して物理的価値より精神的価値を求める人が増えています。
生活必需品の購入でも、できるだけ快適に買える手法や場を選びますし、新しく何かを購入する際は、商品だけでなくそこで得られる新鮮さや面白さなど体験を重視するようになりました。
品質面での差別化が困難
最近のスマートフォンがよい例ですが、斬新な商品が登場してもあっというまに多くのメーカーがキャッチアップし、安価で同レベルの機能の商品を出してきます。現代は商品がコモディティ化するスピードが速いため、品質だけで勝負していると価格競争に巻きこまれるリスクが高くなります。
そのため「商品の価値」+「トータルな体験という付加価値」で自社の独自性を追求する企業が増えました。
一緒に働く仲間を募集しています。
顧客体験価値の5つの要素
コロンビア大学のバーンド・H・シュミット氏は、顧客体験価値を構成する5つの要素を提唱しています。
要素①:Sense(感覚的価値)
Senseとは、消費者が五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)で感じる体験価値です。具体的には、デザインや肌触り、音の大きさなど総合的な印象が消費者の体験を形成します。
例えば店舗なら入ったときに感じる雰囲気や実際に商品に触ってみたときの質感、その商品を使うことで得られるライフスタイルへの期待感などが感覚的価値となります。
要素②:Feel(情緒的価値)
Feelとは、感情面に関わる体験価値です。具体的にはブランドに対する愛着や商品に対して漠然ともっている好感を意味します。「この会社の商品であれば何となく信頼できる」という感情も情緒的価値といえるでしょう。
要素③:Think(創造的・知的価値)
Thinkとは、消費者の好奇心を喚起する体験価値です。購入することで消費者が「勉強になる」「面白い」と感じ、積極的に商品について情報収集するようになる価値を指します。その商品を活用することで、自分が向上していると感じられることは人にとって大きな価値となるでしょう。
要素④:Act(行動にかかわる価値)
Actとは、消費者が商品を体験することで得られる体験価値です。体験したいと思っていたが実際にはできていなかったことを実現できたという思いが感動や喜びにつながります。例えば、近年増えているお一人様向けのサービスは、単身者に新しい体験価値を提供しています。
要素⑤:Relate(社会的経験価値)
Relateとは、消費者が特定のコミュニティに帰属することで得られる体験価値です。例えば、メンバーシップ(会員権)やオンラインサロンなどのコミュニティの一員として体験を共有できる経験価値です。また、SDGsのような企業活動も、社会的価値の高い活動のコミュニティに加わっているという価値を感じてもらえるでしょう。
顧客体験価値を向上させるポイント
顧客体験価値を向上させる3つのポイントをご紹介します。
ポイント①:消費者ニーズの分析
まず、自社がどのような顧客体験価値を提供できているかリサーチします。リサーチの方法には市場調査や顧客満足度調査、NPS(ネットプロモータースコア)などがあります。特にNPSは「この商品を知人におすすめしたいですか?」という一つの質問であれば顧客に負担も小さく、かつシビアな評価がわかるため有効です。
ポイント②:課題の抽出と施策の実施
次に自社の具体的な課題を抽出します。人の購買心理・行動は、認知→興味→検討→購入→利用中の評価というステップをたどります。「カスタマージャーニー」というマップを作成することで、この工程の中でどこがボトルネックになっているかを特定し対策を立てます。
例えば、検討段階で迷ってしまう顧客が多いなら、試供品の提供やメールマガジンでの継続した情報提供などが有効な対策となるでしょう。
ポイント③:PDCAサイクルを通じた改善
対策を実施してからも継続して顧客満足度調査やNPSをおこない、顧客体験が向上しているか追跡します。向上しない場合は新たな対策を検討しましょう。このように地道にPDCAを回しながら顧客体験価値を向上させることが、見込み顧客の顧客化や既存顧客のロイヤルカスタマー化につながります。
まとめ
現代社会はモノ消費からコト消費へとニーズがシフトしています。商品の品質のみでの差別化が難しくなっているため、顧客体験価値の重要性はますます増していくでしょう。
顧客体験価値を高めていくための5つの要素(Sense・Feel・Think・Act・Relate)の意味や向上に向けたポイントなどを参考に、顧客体験価値に対する理解を深めていただければ幸いです。
採用インフォメーション
今回ご紹介した、顧客体験価値の考え方は、ボーコンセプトのセールス理念とも重なります。ボーコンセプトは単なる家具の販売ではなく、家具の提案を通じてお客様一人ひとりに最適な住空間をプロデュースすることで、最高の顧客体験価値を提供することを目指しています。
そのセールスの中核を担うのがセールスアソシエイト(SA)です。ボーコンセプトの理念や社員の行動指針、キャリアプラン、サポート体制については以下の記事をご覧ください。また、社員インタビュー記事からは現場のSAの声を知ることができますので、ぜひ合わせてご覧いただければと思います。
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